METライブビューイング「マクベス」
METライブビューイングによるヴェルディのオペラ「マクベス」を見る(MOVIX京都、24日)。
これは、アメリカのメトロポリタン歌劇場で上演されたオペラを録画して、日本の映画館で流す試みである。私は、こうしたものは生が一番と考える方だが、関西でめったに上演されない「マクベス」とあって出かけた。
しかしながら、やはり違和感は大いに感じた。以前、京都南座で「魔笛」が上演されたときに見たが、今回は映画館とあって、スクリーンは見やすいし、音響もいくぶんましにはなった。しかし、映画館の大音響というのは、劇場で聴く音とはまったく違うものである。また、映像もカメラが大きく上下左右に動くし、細かく場面を切り替えたり、歌手をアップにしたりするのも劇場で見るのとは違った視点である。
これらは、劇場に足を運ばない人たちに退屈させずにオペラを見せる工夫ではあるのだろうが、オペラ・ファンには受け入れられないのではないか。だいたい、アメリカではともかく、日本でオペラファンでもない人が、3500円も払って映画館にオペラを見に行くとも思えない。やはり、足を運ぶのはオペラ好きなのであるから、まずはオペラファンを納得させる上演をすべきであろう。そういう点では、映像は動かしようがないとしても、せめて音量を8割くらいに絞ってほしかった。
ということで、通常のオペラよりも映画を見るような感覚が強かったが、実際に作品もそうした見せ方をするのにふさわしいものが選ばれたと思う。「マクベス」は、言うまでもなくシェークスピアの原作によるが、それだけあって演劇的である。オペラにつきものの冗長さがなく、展開がスピーディーであるし、場面の劇性も高い。
だが、肝心の音楽が聴こえてこない。というのは、通常、劇場でオペラを見るときは、視点が限られているし、アップで歌手の表情をとらえることもないから、視覚的楽しみが制限されるために、より聴覚が動員されるのではないだろうか。今回は、視覚重視のために、意識が聴覚に振り向けられる割合が低かったように思う。もちろん、先に述べた音響のひどさや、ヴェルディ初期の作品であり、作品に後期ほどは充実していないということもあるだろう。結局のところ、視覚は印象に残っているが、耳にはあまり記憶が残っていないのである。
演出は、エイドリアン・ノーブル。舞台を20世紀の内戦が起きたどこかの国に設定している。実際、権力者が政敵を葬り去り、独裁政権を敷くというのは、20世紀には至るところであったことだし、21世紀でも起こりうる設定である。そうした点では、作品を現在につなげる秀逸な設定であると思う。
また、幕間に紹介された、METのライブビューイングをアメリカの公立高校に無料配信する試みも興味深い。単に劇場に足を運ぶ一部のお金持ちだけではなく、オペラをどのように市民に還元していくかということへの意気込みが感じられる。日本の芸術団体にも見習ってほしい取り組みである。
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