2008年3月30日 (日)

歌わせたい男たち

永井愛作・演出の「歌わせたい男たち」を見る(30日・びわ湖ホール)。

これは、ある都立学校において君が代の伴奏をする音楽教師と、それに反対する社会化教師、君が代を全員に歌わせたい校長らが繰り広げられるコメディーである。以前、上演されたときに話題になった作品だが、そのときは都合がつかず見られなかったのであるが、今回、再演に際し、ようやく見ることができた。

さて、なかなかよくできた芝居である。君が代の伴奏に関しては、劇中でも触れられているように裁判になっており、タイムリーでもあり社会性もある。しかし、舞台は一学校の音楽教師、社会科教師、校長らのきわめて人間性のあるミクロな物語でもある。そして、大いに笑えて、考えさせられて、・・・そして少し怖くなる話である。

この作品、外国の人に説明しても、今、現にこの日本で起きている話だとはとうてい信じてもらえなかったという話を聞いたが、日本人である我々が見たら、すごく理解できる話でもある。君が代を強制するのはおかしいという社会化教師の主張も、愛国心を養うためにも君が代を歌わせようとする校長も、主義主張にこだわらないいわゆるノンポリの音楽教師も、みんな身近にいる人たちである。

そして議論をしても、議論にならず、次第に感情論や泣き落としになるというのも、日本人の本質をついている。まさに、現代を、日本を、我々を描いた作品である。

最後は、舞台では結論は出ない。音楽教師は君が代を弾いたのか。社会科教師は起立したのか。いろいろな解釈があると思う。そう、いろいろ考えられるのが芸術のよさなのだ。この考える余地を残すという演劇の終わり方が、この問題に対する解答なのだ。

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2007年5月27日 (日)

三谷幸喜「コンフィダント」

三谷幸喜の最新作「コンフィダント」は、実に「大人」な感じのする作品である。

ストーリーは、パリに集まる4人の若き無名の画家、ゴッホ、ゴーギャン、スーラ、シュフネッケルが共同でアトリエを借りて、作品を製作しようとするが、芸術家同士の嫉妬などの末に分かれるまでの1箇月間を、そこにモデルとして雇われた1人の女性を通して語る話、とでも要約できるほどに単純である。

4人の男性と1人の女性ならば、当然に恋愛感情や三角関係などが出てくると思うのだろうが、それは出てきても主題ではない。飽くまで4人がそれぞれの持っているもの-わずかな名声であったり、才能であったり、そういったものを比べて、優越感を持ったり、落胆したり、いさかいを起こしたりする。

そういったことは、別に芸術家ではなく、普通の我々でも理解できる感情ではある。「自分はだれそれよりも出来る」と思ってみたり、「あいつは何てすごいんだ」と思うことは、若いころならば皆が経験する感情ではあるが、そのうちにそういったことを気にせず、社会と折り合いを付けていくようになる。

それは大人になるということかもしれないが、その反面、失ったものも多いのではないだろうか。才能というものにそこまで向かい合うものが真の芸術にたどり着けるのかもしれない。

いまや演劇の世界では、トップクラスに踊り出た三谷幸喜でもそういったことに悩むのだろうか。あまり「ドタバタ」を見せずに、淡々と物語を作りながらも、深い余韻を持つ作品は、実に完成度の高いものではあるが、若い自分の三谷作品の持っていたエネルギーと比べると、どこか醒めた感じがするのだが。

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2006年8月23日 (水)

沢田研二の芝居

音楽劇・モダン出世双六「天国を見た男」を見る。

主演は,沢田研二。ヒロインに南野陽子,準主役には狂言師の茂山宗彦が抜擢されている。

舞台は昭和10年の大阪の街。上記メンバーに加えて演出にマキノノゾミを据えており,関西に縁のメンバーで固めているだけあって,関西弁のセリフや笑いの感覚も統一性があり,全国区のメンバーによりながら,ローカル色を出すことにも成功している。東京,名古屋に続く大阪公演の初日であったが,大阪の人が見ても違和感はないと思われる。

さて,見所は,何といっても沢田研二の歌と芝居に尽きる。沢田研二が主演の芝居と聞くと,本人のファン以外は,「沢田研二の人気にあやかっただけのものだろう」と思うだろうが(失礼ながら,私も見るまではそう思ってました),なかなかどうして。本人の名声を知らず,初めてこの芝居を見た人がいたとしても,本人を一流の役者と認めるのではないかという出来栄えであった。

逆に言えば,その沢田研二を見るための芝居以上のものではなかったと言えるかもしれない。ストーリーはありきたりで予定調和的であるし,南野ほかの共演陣も沢田の引き立て役に回った感が強い。唯一,気が利いていたのはギターの生演奏による伴奏か。

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